2017年流行語大賞の真相と現在|忖度とインスタ映えが遺したもの
日本列島がスマートフォンの画面越しに視覚的快楽を追い求める一方で、政治の中枢では「言葉にされない意向」が公文書を揺るがしていました。2017年12月1日に発表された「現代用語の基礎知識選 ユーキャン新語・流行語大賞2017」は、象徴的な2つの言葉「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」を年間大賞に選出しました。あれから約9年の歳月が流れた2026年の現在、あの熱狂と騒乱は何を残し、私たちの生活や言語空間をどう変容させたのでしょうか。
本稿では、当時の授賞式取材や一次証言、メディア報道の記録を紐解きながら、トップテンに名を連ねた言葉たちの選考理由と背景を徹底検証します。さらに、一大旋風を巻き起こした人物たちの2026年現在のリアルな歩みや、制度として導入された言葉の現在の状況に至るまで、当時の空気感を生々しく蘇らせながら深層へと切り込みます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2017年の年間大賞は、視覚消費の極致である「インスタ映え」と、組織の病理を暴いた「忖度」という、表と裏の日本社会を象徴する2語が選ばれた。
- 要点2:「35億」の藤原しおり(元ブルゾンちえみ)の転身や「ひふみん」の国民的人気、形骸化した「プレミアムフライデー」など、受賞語の現在地は極端な明暗が分かれている。
- 要点3:当時のノミネート選考を巡る政治バイアス批判の裏には、SNSによる分断の萌芽と、大衆が共有する「真の流行」の解体という構造的転換点があった。
【真相解明】2017年流行語大賞の年間大賞「インスタ映え」「忖度」の選考理由と背景
2017年流行語大賞において、史上稀に見る「ダブル年間大賞」となった背景には、当時の選考委員会が直面した強烈なコントラストがありました。審査講評において実行委員会が「SNSという個人の自己表現の爆発」と「国家中枢の密室で起きた組織的論理」という、対極にある世相を同時に切り取る必要性に迫られたと明かした通り、2017年は光と影が同時に噴出した年でした。
「インスタ映え 流行語大賞 選考理由」を振り返ると、単なる若者カルチャーの枠を超え、日本経済の消費行動そのものを書き換えた点が極めて高く評価されました。受賞者として登壇したのは、女性ファッション誌『CanCam』専属モデルの読者集団「CanCam it girl」のメンバーたちでした。カラフルなスイーツ、ナイトプール、フォトジェニックな壁面アートを求めて人々が移動し、「写真映えするかどうか」があらゆる商品開発や観光誘致の絶対基準となった現象は、スマートフォンの普及率が7割を超えた当時の決定的潮流だったのです。
一方で、もう一つの年間大賞「忖度」は、森友・加計学園問題を巡る報道の過程で、突如として社会のキーワードに浮上しました。発端は2017年3月、学校法人森友学園の籠池泰典前理事長(当時)が日本外国特派員協会で行った記者会見です。「忖度 流行語大賞 意味と真相」を辿れば、元来は「他人の心中を推し量る」という奥ゆかしい美徳を表す漢語でした。しかし、この会見と国会審議を通じて、「権力者の意向を先回りして不正や公文書改ざんに手を染める」という、官僚機構および日本的組織の隠蔽体質を指す負の隠語へと急速に変容を遂げました。
表層ではスマートフォンを掲げてキラキラした自己像を演出しながら、裏層では上司の顔色を窺い空気を読み続ける——この「承認欲求」と「同調圧力」の強烈な二重構造こそが、2017年の日本社会が抱えていたリアルな精神構造であり、選考委員会が2語を併記せざるを得なかった真相と言えます。

【2017年流行語大賞 トップテン一覧】激動の世相を映した受賞語の総括比較
2017年新語・流行語大賞 ノミネート30語の発表から絞り込まれたトップテンは、エンタメ、政治、社会労働問題、安全保障まで、極めて振れ幅の大きいラインナップとなりました。2017年流行語大賞 トップテン一覧を振り返ると、現在も日常会話に溶け込んでいる言葉がある一方で、急速に風化した施策もあり、その後の定着度には大きな隔たりが見られます。
| 受賞語 | 受賞者・発信元 | 当時の選考理由・背景 | 2026年現在の定着状況と編集部評価 |
|---|---|---|---|
| インスタ映え (年間大賞) | Cancam it girl | Instagramの急速な拡大に伴い、「映え」が全産業のマーケティング指標となった。 | 「映え」は一般語化。ただし若年層では「映え疲れ」から自然体(チル、無加工)へ価値観がシフト。 |
| 忖度(そんたく) (年間大賞) | 稲垣栄三(ヘソプロダクション) | 森友問題で脚光を浴び、組織内で意向を先回りする力学を表す言葉として大流行。 | ビジネス用語・日常会話に完全定着。「忖度まんじゅう」などのパロディを経て、組織風土改革の基本概念に。 |
| 35億 | ブルゾンちえみ | キャリアウーマンネタで大ブレイク。オースティン・マホーンの楽曲と共に社会現象化。 | 本人は芸能界を離れ本名で文筆・環境活動へ。ネタとしての汎用性の高さから今なおパロディとして残存。 |
| ひふみん | 加藤一二三(棋士九段) | 現役引退に伴い、天真爛漫なキャラクターがバラエティで大人気となり将棋ブームを牽引。 | 国民的愛称として定着。藤井聡太の台頭と相まって、将棋文化の親しみやすさを底上げした功績大。 |
| 睡眠負債 | 枝川義邦(早稲田大学教授) | わずかな睡眠不足の蓄積が心身を蝕むリスクをNHKスペシャル等が警鐘を鳴らし話題に。 | 医学・健康ビジネス分野に完全定着。スリープテック市場の拡大を後押しする決定打となった。 |
| プレミアムフライデー | プレミアムフライデー推進協議会 | 経産省主導で「月末金曜15時退社」を促し消費拡大を目指した官民プロジェクト。 | 実施企業の少なさから事実上形骸化。働き方改革やリモートワーク普及の中に埋没する結果に。 |
| Jアラート | 辞退(該当者なし) | 北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射で警報が相次ぎ、危機意識が急激に高まった。 | 国民的防衛システムとして日常化。緊急警報メールの音とともに防災インフラの認知を確立。 |
| フェイクニュース | 辞退(該当者なし) | 米トランプ大統領の就任やSNS拡散により、虚偽情報が民主主義を脅かす問題として浮上。 | 生成AIの登場で脅威度は当時より劇的に深刻化。ファクトチェック組織の設立など社会課題の核心へ。 |
| 魔の2回生 | 辞退(該当者なし) | 自民党の2期目議員による不祥事や暴言が連続して発覚し、メディアを賑わせた。 | 政治スキャンダルを表す定型句として現在も国政選挙のたびにメディアで援用される。 |
| 〇〇ファースト | 辞退(該当者なし) | トランプ氏の「アメリカファースト」や小池百合子都知事率いる「都民ファースト」が席巻。 | 「顧客ファースト」などビジネスでの常套句化。一方、ポピュリズムの代名詞としても記憶される。 |
また、この年は「選考委員特別賞」として、陸上100メートルで日本人初の9秒台(9秒98)を記録した桐生祥秀選手の「9.98」と、将棋界でデビュー以来無敗の公式戦連勝新記録を達成した藤井聡太四段(当時)の「29連勝」が選ばれました。後の絶対王者となる藤井聡太竜王・名人の快進撃の原点が、この2017年に刻まれていたことは特筆すべき史実です。
ブームの光と影|ブルゾンちえみ「35億」や「ひふみん」の2026年現在のリアル
流行語大賞を彩った主役たちの歩みは、ブームの熱狂が去った後の生き方を雄弁に物語っています。
当時、コシノジュンコ風ボブカットとキャリアウーマンスタイルで「35億」を叫び、わずか1年で頂点へと駆け上がったブルゾンちえみ氏。彼女の現在の姿に迫ると、芸能界の既定路線にとらわれない自律的な生き方が見えてきます。彼女は2020年3月をもって所属事務所を円満退所し、芸名を本名の「藤原しおり」へと改めました。当時の手記や独占インタビューで彼女は「求められるブルゾンちえみ像と、本来の自分との乖離に苦しみ、呼吸が浅くなっていた」と率直に明かしています。2026年現在、彼女は文筆業、エコロジーや環境問題への啓蒙、パーソナリティ活動など、自身の内発的動機に基づいた発信を続けており、消費されるアイコンから表現者へのシフトを完全に成し遂げています。
一方、「ひふみん 加藤一二三 流行語」として老若男女から愛された加藤一二三九段は、2017年6月に現役を退いて以降も、将棋界きっての文化人として確固たる地位を築きました。最高齢勝利記録(77歳)の樹立直後に引退し、その天真爛漫な人柄でバラエティ番組を席巻した彼は、将棋の魅力を広く一般家庭に浸透させる架け橋となりました。2020年代半ばを過ぎた現在も、将棋界のレジェンドとして温かな存在感を放ち続けています。
対照的に、構造的な失敗として語り継がれるのが「プレミアムフライデー 現在の状況」です。経済産業省および日本経済団体連合会が肝煎りで推進した「月末金曜日は15時に仕事を終えて豊かに過ごす」というキャンペーンは、中小企業へのしわ寄せや月末の業務繁忙期とのミスマッチにより、導入初年から参加率は1割台前半に低迷しました。その後のコロナ禍を経てリモートワークやフレックスタイム制が普及した結果、「あえて月末金曜日に官民一体で騒ぐ」必然性は完全に消失し、現在では官公庁の施策史における典型的な形骸化事例として社会学や経営学のテキストで言及されるにとどまっています。

【実態検証】利用者の生の声とネットの反応に見る「選考バイアス論争」
「ユーキャン新語・流行語大賞2017」の発表時、インターネット空間、特に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)や当時のTwitter(現X)では、例年以上に激しい賛否両論が巻き起こりました。2017年話題の言葉 経緯まとめを分析すると、世論の反発の矛先は主に「トップテンの選考基準」に向けられていました。
「2017年流行語大賞 ネットの反応」で最も目立ったのは、「魔の2回生」「Jアラート」「共謀罪」など、政治色の強い言葉がノミネート30語やトップテンに過剰に偏重しているのではないかという批判です。当時のネットユーザーからは以下のような厳しい意見が相次ぎました。
「忖度が大賞なのは事件の大きさを考えれば納得だが、魔の2回生や〇〇ファーストまで入れるのはメディアや審査員の政治的意図を感じざるを得ない」
「若者の間では『インスタ映え』以上に『卍(まんじ)』や『草生える』のほうが日常的に使われていた。審査員の世代感覚と現場のリアルに乖離がある」
特に「Jアラート」のトップテン入りに関しては、ミサイル発射という安全保障上の危機であり、恐怖を喚起する警報システムを「流行語」として顕彰することに対する倫理的な疑問の声も少なくありませんでした。結果として関係者が受賞を辞退し、盾の授与が行われなかった事態は、メディアが作り出す「流行の空気」と市民感覚との間に横たわる摩擦を露わにしました。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
流行語大賞の歴史を振り返る上で、多くの人々が抱いている誤解が2点存在します。
第一に、「流行語大賞はその年に最も多く使われた言葉を統計的に選ぶランキングである」という誤解です。実際には、主催である自由国民社が発行する『現代用語の基礎知識』の読者アンケートを基盤にしつつも、最終決定は選考委員会(作家、ジャーナリスト、大学教授ら)の合議に委ねられています。選考基準は単純な頻出頻度(データ量)ではなく、「その年の世相をどれだけ鋭利に風刺・記録しているか」という批評性に重きが置かれています。したがって、SNSで爆発的なインプレッションを記録したスラングが落選し、新聞の見出しを飾った重い言葉が選ばれるのは、制度設計上の必然なのです。
第二に、「インスタ映えはインスタグラム社(Meta社)主導のプロモーション語だった」という俗説です。これも事実とは異なります。当時、Instagramの日本法人(Meta日本法人)は「インスタ映え」という言葉の受賞主体ではありませんでした。登壇したのはCanCam it girlの女性たちであり、言葉自体はユーザーコミュニティと女性誌カルチャーの現場から自然発生したものでした。企業側が仕掛けたマーケティング用語ではなく、生活者が自らの消費行動を肯定するために生み出したフレーズだった点に、この言葉の持つ爆発力の秘密がありました。

【プロの結論】承認欲求と同調圧力の構造から見出すべき教訓
2017年という年は、日本の情報環境が不可逆的な変化を遂げたターニングポイントでした。年間大賞となった「インスタ映え」と「忖度」は、一見すると無関係なカルチャーと政治の言葉に見えますが、社会心理学のレンズを通せば、同根の心理的力学「他者視線への過剰適応」から生じた現象であることが分かります。
「インスタ映え」は、他者からどう見られているかというデジタルな承認への依存を生み出し、後に「映え疲れ」や自己肯定感の低下といったメンタルヘルスの課題を噴出させました。一方の「忖度」は、組織の中で波風を立てず、強者の意向を汲み取ることで自らの安全を確保しようとする、過度な同調圧力の産物でした。両者に共通するのは、「自分自身の確固たる内面」よりも「他者の眼差しや意向」を最優先させてしまう心理的バウンダリー(境界線)の崩壊です。
この2017年の教訓から、私たちが2026年の情報社会を健全に生き抜くための明確な判断基準を提示します。
他者評価に振り回されないための選択基準
【選ぶべき姿勢】:内発的動機に基づいた情報発信とコミュニケーション
自らの実感や知的好奇心を起点とし、アルゴリズムの歓心や他人の顔色を伺わない生活態度。流行語を「時代の記号」として客観的に観察し、自身の価値軸を明け渡さない人こそが、デジタル社会で疲弊せずに自立を維持できます。
【避けるべき思考】:承認と保身を目的化した過剰適応
「他人にどう見られるか」だけで行動を決定する映えの追求や、「空気を乱さないこと」を正義として不正や不合理に目をつぶる組織内忖度。これらは一時的な安心をもたらすものの、長期的には個人の倫理観と精神的健康を深刻に損なうリスク要因となります。
【2017 流行 語 大賞】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2017年の流行語大賞で年間大賞を受賞した言葉は何ですか?
A1:「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」の2語がダブル受賞を果たしました。SNSカルチャーの過熱を象徴する言葉と、政治・公文書問題を端緒に組織の体質を浮き彫りにした言葉が並び立つ、異例の選考となりました。
Q2:ノミネート30語には他にどのような言葉が入っていましたか?
A2:トップテン入りした言葉以外にも、「けものフレンズ」「空前絶後の」「刀剣乱舞」「ハンドスピナー」「うんこ漢字ドリル」「ユーチューバー」「AIスピーカー」「ワンオペ育児」など、当時のポップカルチャーや育児・テクノロジーの現場を反映した多彩な言葉がノミネートされました。
Q3:なぜ「プレミアムフライデー」は失敗・形骸化したと言われるのですか?
A3:月末の金曜日という最も業務が集中する繁忙期に「15時退社」を設定したため、中小企業やサービス業を中心に実行が極めて困難だったことが最大の要因です。消費喚起の効果も限定的で、その後のテレワークや柔軟な勤務形態の浸透に伴い、制度としての実効性を完全に失いました。
まとめ:時代の鏡としての流行語が2026年の私たちに問いかけるもの
言葉は世相を映し出す鏡であり、その時代に生きる人々が無意識のうちに共有していた欲望や不安の記録です。2017年流行語大賞が切り取った「インスタ映え」と「忖度」は、スマートフォンの普及とSNSの日常化によって、私たちが「他者の視線」に過敏になり始めた時代の決定的な断面でした。
2026年を迎えた現在、写真の見た目を競い合う極端な映え文化は沈静化し、SNS空間は短尺動画や日常の自然体を重視する方向へと再編されました。また、組織における忖度の弊害はコンプライアンス意識やガバナンス改革の議論へと昇華されつつあります。過去の流行語を振り返る作業は、単なる懐古趣味にとどまりません。私たちがどの地点から歩み出し、どこへ向かっているのかを冷静に測るための、極めて精緻な羅針盤となってくれるのです。 (出典: 2017 流行 語 大賞(Yahoo!ニュース))