佐久間製菓とサクマ製菓の違いを徹底解剖|廃業の真相と赤緑缶の歴史
日本人の誰もが一度は口にしたことがある、あのどこか懐かしい缶入りドロップ。2023年1月に報じられた「ドロップ製造元の廃業」というニュースは、日本全国の消費者に大きな衝撃を与えました。当時、SNS上では「もうあのドロップが食べられなくなるのか」「『いちごみるく』も消えてしまうのか」とパニックに近い混乱が巻き起こりました。
しかし、廃業から時間が経過した2026年の今なお、店頭には変わらず緑色の缶入りドロップや三角のキャンディが並んでいます。消費者の間で生じた混乱の根底には、「佐久間製菓」と「サクマ製菓」という酷似した2つの会社が存在していたという、昭和の産業史における特異な経緯がありました。両社はなぜ分裂し、どちらが倒産・廃業を選び、なぜ一方は今も力強く生き残っているのか。取材データと歴史的資料をもとに、赤缶と緑缶の違いから現在の販売実態まで、その全貌を解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2023年1月に廃業したのは漢字表記の佐久間製菓(赤缶:サクマ式ドロップス)であり、カタカナのサクマ製菓(緑缶:サクマドロップス)は2026年現在も営業を継続している。
- 要点2:ロングセラー商品「いちごみるく」はサクマ製菓(カタカナ)の主力製品であり、廃業騒動の影響を一切受けることなく通常通り流通している。
- 要点3:もともと同じ1つの会社だったが、戦時下の解散を経て戦後に旧経営陣と幹部が別々に再建したことで2社に分裂し、激しい法廷闘争を経て併存してきた。
【真相解明】どっちが倒産・廃業した?サクマ製菓といちごみるくの現在
ネット上や店頭で最も多く投げかけられる疑問が、「結局、どっちが倒産(廃業)したのか」という点です。結論から明確に整理すると、2023年1月20日をもって廃業したのは漢字表記の「佐久間製菓株式会社」です。同社が製造していたのが、スタジオジブリ映画『火垂るの墓』に登場したことで世界的に知られる、赤色の缶に入った「サクマ式ドロップス」でした。
一方で、カタカナ表記の「サクマ製菓株式会社」は倒産しておらず、経営危機に陥った事実もありません。緑色の缶でおなじみの「サクマドロップス」をはじめ、1970年の発売以来国民的人気を誇る「いちごみるく」などの看板商品を、2026年の現在も精力的に製造・販売し続けています。
佐久間製菓の廃業発表直後、サクマ製菓の公式SNSやお客様相談窓口には問い合わせが殺到しました。当時、サクマ製菓側は「廃業するのは弊社ではなく佐久間製菓様です。『サクマドロップス』や『いちごみるく』は今後も販売を継続いたします」と異例の声明を発表する事態に発展しました。社名が極めて似ていたため、一般消費者が「ドロップの会社が丸ごと世の中から消退した」と錯覚してしまったのです。

赤缶と緑缶の見分け方|サクマ式ドロップスとサクマドロップスの味の違い
店頭で見かけた際、多くの人が混同していた「赤缶」と「緑缶」。両者にはパッケージのデザインだけでなく、商標の冠記、そして中に入っているフレーバーの構成に決定的な違いがありました。
見分け方の最大のポイントは、缶の地色と「式」という文字の有無です。廃業した佐久間製菓の製品には「サクマ式ドロップス」と「式」の文字が刻まれ、パッケージは重厚感のある赤色(赤缶)がベースでした。対して、現存するサクマ製菓の製品は「サクマドロップス」であり、「式」の文字はなく、爽快感のある緑色(緑缶)が基調となっています。
さらに興味深いのが、それぞれの缶に封入されていたフレーバー(味)の内訳です。両社ともに1缶につき8種類の味を揃えていましたが、そのラインナップには明確な差別化が図られていました。
佐久間製菓のサクマ式(赤缶)には、「チョコ味」が含まれていたのが最大の特徴でした。缶から濃い褐色の粒が出てきたときの特別感は、多くの昭和・平成世代の記憶に深く刻まれています。一方でサクマ製菓(緑缶)はチョコ味を採用せず、代わりに「メロン味」と「スモモ味」を導入し、フルーティーな果汁感と爽やかさを前面に押し出していました。
製法や原材料にも違いが見られ、佐久間製菓が創業初期からの伝統的なレシピと製缶技術を固守したのに対し、サクマ製菓はクエン酸の配合比率や濃縮果汁の活用を積極的にアップデートし、時代に合わせたモダンな味わいを追求してきました。似て非なるこの2つの味は、愛好家の間で長年「食べ比べ」の対象として親しまれてきたのです。
【徹底比較】佐久間製菓とサクマ製菓の企業データ・商品スペック一覧
2つの企業の沿革、商品ラインナップ、味の構成、そして現在の動向を客観的データに基づき比較表にまとめました。
| 項目 | 佐久間製菓(漢字) | サクマ製菓(カタカナ) | 編集部の解説・評価 |
|---|---|---|---|
| 登記社名 | 佐久間製菓株式会社 | サクマ製菓株式会社 | 漢字表記とカタカナ表記で法的に完全分離 |
| 戦後の再建時期 | 1948年11月(池袋) | 1947年(渋谷) | 戦後ほぼ同時期に旧経営陣・社員が別々に再起 |
| 代表的ドロップ | サクマ式ドロップス(赤缶) | サクマドロップス(緑缶) | 「式」の有無と缶の色で判別可能 |
| 味の構成(8種) | イチゴ、レモン、オレンジ、パイン、リンゴ、ハッカ、ブドウ、チョコ | イチゴ、レモン、オレンジ、パイン、リンゴ、ハッカ、スモモ、メロン | チョコの有無、スモモ・メロンの有無が決定的差 |
| 映画『火垂るの墓』 | 作中に登場(赤缶) | 登場せず(コラボ製品等もなし) | 節子が持っていたのは佐久間製菓の赤缶 |
| メガヒット主力品 | サクマ式ドロップス、キャンディ各種 | いちごみるく、サクマドロップス、チャオ | サクマ製菓はいちごみるくという第2の柱を確立 |
| 事業状況(2026年現在) | 2023年1月20日廃業 | 通常営業中(黒字基調) | 事業多角化と適応力の差が明暗を分けた結果に |

明治から戦後の分裂へ|佐久間製菓とサクマ製菓の歴史と創業の原点
なぜ、これほど似通った2つの企業が同じ日本でドロップを作り続けていたのか。そのルーツは、明治末期の1人の菓子職人の情熱に遡ります。
1908年(明治41年)、創業者の佐久間惣治郎が「佐久間惣治郎商店」を設立しました。当時、日本国内で流通していたドロップは英国製などの高価な輸入品ばかりで、庶民には手の届かない高級菓子でした。惣治郎は試行錯誤の末、独自の技術によって日本で初めてとなる国産ドロップの量産化に成功。自身の名を冠した「サクマ式ドロップス」と命名しました。続く1913年(大正2年)には、湿気を防ぎ携帯性に優れた画期的な「缶入りドロップス」を発売し、全国的な大ヒットを記録します。
しかし、昭和の激動がこの老舗を過酷な運命へと突き落とします。太平洋戦争が激化する中、砂糖は厳格な配給統制下に置かれ、原材料の調達が不可能となりました。そして1944年(昭和19年)11月、戦時企業整備令によって佐久間製菓は強制的な廃業と企業解散を余儀なくされたのです。
終戦後、焼け野原の中で「あのサクマの味を復活させたい」と立ち上がった人々が、歴史の分岐点を作りました。旧佐久間製菓の社長を務めていた山田弘隆の三男・山田隆博らが1947年に東京都渋谷区で創業したのが「サクマ製菓(カタカナ)」です。一方、旧会社の幹部・番頭格であった横倉信之助らが1948年11月に東京都豊島区池袋で佐久間製菓を再建したのが「佐久間製菓(漢字)」でした。
同じ源流を持つ2つの企業が同時に立ち上がったことで、看板ブランドである「サクマ式ドロップス」の商標権を巡る激しい法廷闘争が勃発します。長年にわたる係争の末、裁判所は佐久間製菓(池袋)に「サクマ式ドロップス」の商標権を認め、サクマ製菓(渋谷)には「サクマ」の商号使用を認めるという司法判断を下しました。この法的手打ちにより、「佐久間製菓=サクマ式ドロップス(赤缶)」「サクマ製菓=サクマドロップス(緑缶)」という、半世紀以上にわたる並走体制が固定化されたのです。
佐久間製菓の廃業理由と「現在買えるか」のリアル検証
1908年の創業から数えて114年の歴史を刻んできた佐久間製菓が、なぜ2023年に自主廃業へと追い込まれたのか。東京商工リサーチや帝国データバンクの調査資料、業界関係者の証言を紐解くと、複合的な構造問題が浮き彫りになります。
最大の要因は、菓子の嗜好変化と代替品との競争激化でした。昭和から平成、令和へと移り変わる中で、手軽に食べられるグミや清涼錠菓(タブレット菓子)、個包装チョコレートが市場を席巻。缶を開けるのに道具が必要な場合もあり、一度開封すると持ち歩きにくい缶入りドロップは、若年層を中心に日常的な需要がじわじわと縮小していました。
そこに追い打ちをかけたのが、世界的な原材料価格およびエネルギーコストの急騰です。砂糖や水飴の価格上昇に加え、缶容器の材料であるブリキ鋼板の高騰、包装資材・物流費の跳ね上がりは、利益率の低い伝統菓子事業を直撃しました。さらに、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、主要な販路であった観光地のお土産需要や駅売店での売上が蒸発。2021年9月期の決算では約1億5100万円の最終赤字を計上し、老朽化した設備の更新や後継者の確保も困難となったことから、これ以上の事業継続は困難と判断し、自主廃業という苦渋の決断を下しました。
サクマ式ドロップス(赤缶)は2026年現在買えるのか?
現在、消費者が「サクマ式ドロップス(赤缶)」を購入することは可能なのか。取材と市場調査による実態は極めてシビアです。
佐久間製菓は2023年1月20日をもって業務を終了し、出荷も完全に停止しました。そのため、一般のスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどの正規小売店では、流通在庫が完全に払底しており、定価で新品を購入することは不可能です。
一部のフリマアプリ(メルカリやヤフオク等)では、廃業直後に買い占められた赤缶や『火垂るの墓』記念缶が現在も出品されていますが、定価の数倍から十数倍という高額なプレミア価格が付けられています。しかし、製造から3年以上が経過している缶は賞味期限が切れているか切迫しており、砂糖の潮解(ベタつき)や風味の劣化が進んでいる可能性が高く、食品衛生上の観点からも購入は推奨されません。
なお、サクマ製菓が製造している緑缶の「サクマドロップス」であれば、現在も全国のスーパー、100円ショップ、量販店で定価(130円〜160円前後)にて極めて容易に入手可能です。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|ブランドの心理的罠
佐久間製菓の廃業劇の裏で、ソーシャルメディアを中心に大きな情報の混乱が広がりました。その最たるものが、「いちごみるく消滅デマ」と「ドロップ完全絶滅説」です。
人間には、強い感情を呼び起こすニュース(老舗の廃業、思い出の味の消滅)に触れた際、類似した概念をすべて同一視して危機感を増幅させてしまう心理的な「同調バイアス」と「過度の一般化」が働きやすい傾向があります。「佐久間」と「サクマ」の違い、赤缶と緑缶の区別を普段意識していなかった消費者は、脳内で「サクマ=あのキャンディ全部」と一括りに処理し、根拠のない悲観論を拡散してしまったのです。
【プロの結論】事業承継とブランド戦略から見出すべき教訓
明暗を分けた2社の歴史は、現代のビジネスや企業経営、さらには個人のキャリア選択においても極めて重い教訓を提示しています。
佐久間製菓は、自らのアイデンティティである「伝統の味」「サクマ式」という原点に強い誇りを持ち、それを愚直に守り続けました。その姿勢は文化遺産の継承として尊いものでしたが、主力商品の単一依存(缶入りドロップ一本足打法)から脱却できず、時代の構造変化に対して事業ポートフォリオを柔軟に組み替えることができませんでした。
対照的にサクマ製菓は、「サクマ」の看板を受け継ぎながらも、1970年に「いちごみるく」という全く新しい噛めるキャンディを開発。独自の「クランチ製法」を確立して若い女性や子供層を新規開拓し、現在に至る強固な収益基盤を築き上げました。さらにパウチ袋入りやコラボ商品など、パッケージ形態も時代に合わせて柔軟に進化させています。
「伝統を守るためにこそ、変化を恐れず新たな柱を立てる」。100年を超える2つの企業の分岐点は、変化の激しい2026年の現代を生き抜くすべての組織にとって、示唆に富んだケーススタディと言えます。
【佐久間 製菓 サクマ 製菓 違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:映画『火垂るの墓』で節子が持っていたドロップはどちらの会社のものですか?
A1:映画『火垂るの墓』に登場したのは、2023年に廃業した佐久間製菓の「サクマ式ドロップス(赤缶)」です。スタジオジブリとの正式なコラボレーションにより、劇中の節子のイラストが描かれた記念缶を販売していたのも佐久間製菓でした。現在、この公式コラボ缶は製造されておらず入手困難となっています。
Q2:サクマ製菓の「いちごみるく」の包み紙に秘密があるというのは本当ですか?
A2:本当です。「いちごみるく」の個包装のフィルムには、通常のデザインに混ざって、まれに「いちごのヘタが上を向いている絵柄」や星マークが入っているなどの遊び心が散りばめられています。こうした細やかなファンエンゲージメントも、半世紀以上にわたって愛され続けるロングセラーの秘訣です。
Q3:廃業した佐久間製菓の「サクマ式ドロップス」が今後復活・再販される可能性はありますか?
A3:2026年現在、公式な再販や商標買い取りによる復活のアナウンスは一切行われていません。ただし、「サクマ式ドロップス」という商標やレシピ自体は歴史的価値が極めて高いため、将来的にサクマ製菓をはじめとする第三者企業が権利を継承し、復刻版として限定発売する可能性を完全には否定できません。現時点では公式の動きを静観する必要があります。
まとめ:100年の歴史が教える老舗ブランドの光と影
佐久間製菓とサクマ製菓。その違いの根本には、明治の国産ドロップ誕生、戦時下の苦難、そして戦後の再起をかけた2つの陣営の熱きドラマが存在していました。
赤缶の「サクマ式ドロップス」が歴史の幕を下ろしたことは、昭和・平成の記憶を共有する人々にとって痛恨の喪失でした。しかし、その創業の魂とDNAは、緑缶の「サクマドロップス」や「いちごみるく」を製造し続けるサクマ製菓の手によって、2026年の今も確かに受け継がれています。
もし店頭で緑色の缶やいちごみるくを見かけたら、失われた赤缶の歴史と、激動の時代を乗り越えてドロップの灯を守り続ける職人たちの歩みに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: 佐久間 製菓 サクマ 製菓 違い(Yahoo!ニュース))